実体化用論

じったいけゆう【実体化用】仏の本体とその活動。聖覚作と伝えられる『大原談義聞書鈔』の第三問答に出る説で、浄土門はもっぱら往生するまでを説いて、仏の本体である真如実相とか生仏一如の理を説かないとの聖道門からの非難に答えたもの。すなわち阿弥陀仏の実体をいえば、真如実相がその本体であり、聖道浄土の区別なく諸仏同証である。これを仏の五智(仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智)でいえば仏智にあたる。つぎに化用とは実体の上の教門であって、五智の中の仏智以外の四智によってなる。極楽は不遠であるのに十万億刹の西に構えられ、阿弥陀は己心に在るのに一座華台の形を現ずるのは皆この四智のはたらきで、衆生が煩悩のために、自己の仏性を顕照しがたいので、これを哀れんで法蔵の発心を示現し、超世の本願により、易行易修の口称念仏で頓悟頓入の往生を得させるのである、というのが第三問答の内容である。聖冏は『往生礼讃私記見聞』上で仏の五智の解釈をした後に「この趣大原問答にみえたり、学者これを思うべし」としてこの説に触れている。[参考]『往生礼讃私記巻上拾遺鈔』『浄土頌義探玄鈔』上、『浄土四義私』。(山喜房・浄土宗大辞典より)