実体化用論

おおはらだんぎききがきしょう【大原談義聞書抄】一巻(浄全一四)。聖覚撰。法然上人が一一八六年(文治二)の秋、天台座主顕真の特請によって、洛北大原勝林院において、各宗の碩学を集めて浄土宗義についての座談会が行なわれた。そのとき参集した碩学法然との間に質疑応答が交されたことを、安居院の聖覚が記録したと伝えているもの。内容は一二の問答から成っており、第一問は顕真、第二問は恵光房永弁、第三問は毘沙門堂智海、第四問は竹林房静厳、第五問は光明山の明遍、第六問は笠置の貞慶、第七問は宝地房証真、第八問は顕真、第九問は大原の湛斅、第十問は俊乗房重源、第一一問は顕真、第一二問は永弁であって、法然はそれぞれの質問に対して浄土宗義の真実義を明かにし、優越性を強調した書である。製作については、古来より真偽問題が論じられており、作者未詳とするのが妥当の説と思われる。本書は浄土宗義の哲学的考察をしているとことに高く評価される理由があり、江戸時代において盛んに学習され、注釈書も多数出版されている。[参考]『浄全』二一解題。(山喜房・浄土宗大辞典より)