どう生きる(7)回向発願心

ひとりの凡夫として、命をかけて家族を愛し、仕事に打ち込む。愛せば愛すほど、打ち込めば打ち込むほど、凡夫の性がつけいる隙も増える。悩む機会も多くなる。しかしそれが浄土を願うこころを増大させ、僕をますますお念仏に向かわせる(往相)。
一日三万遍の上品の念仏者は、往生してただちに十方界に還る。家族への愛と仕事への情熱が、死してもなお、浄土にとどまることを許さないのだ。ひとりの凡夫の世俗への熱烈な執着が、悩み悩みのうちに積もる念仏となり、誤った心は阿弥陀様の護りに浄化され、そのような尊い意志に変わるのだろう(還相)。
念仏者の倫理の推進力は、念仏によって与えられるのではなく、凡夫の血と肉に宿っている。念仏者の倫理の操作力は、凡夫のおもわくを超えて、念仏の中に与えられる。